徒然なりまする。

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マザーグール 25話のレビュー

待望のマザーグール25話が更新されました! 

下記から観れます!

comic-ryu.jp

一か月の更新じゃ待ちきれないから、せめて隔週でもいいから更新してくれ~なんて思ってましたが、今回はそんなことも忘れさせてくれる、意外な話でした。

僕自身は前回の記事↓で、

 

 

doatamakita.hatenablog.com

 

「実は少年たちが六つの子供を形作った際に、死んだ愛する少女の魂の一部分が欠けていた。そのために、不完全な生命体としてあの化け物が生まれた」という神話を今回の話あたりで挿入してくるのではないか、ということを一つの可能性として予想していました。

しかしながらその予想は外れで、そうしたエピソードは出てきませんでした。しかし、代わりに今回はなかなか刺激的な神話の語りが入っていました。もう今回はかなり踏み込んだ内容で、もうほとんどの読者は今回の神話が物語に直接つながるものだと考え、そしてあの化け物の正体に察しがついてしまうと思います。

が、その前に今回のお話をさらっとまとめてみようと思います。

 

~今回のあらすじ~

朔夜はちなみの治療の為に、歪んだ家でお湯を沸かそうとしたが、そこには例の4人の老婆が食事をしていた。トリノは日本語と英語でのコミュニケーションを試みるが、無視される。楓子と皆川は老婆たちの部屋へ向かい、彼女らがまさにインブンチェを作っている様子を目撃するが、皆川は親友の東子がいないことに気づく。東子の肉体はごみ溜めのようなのころに放られていて、皆川はそれを「東子は卵を産めなかった」→「用済みになった」と解釈し、激昂して老婆に斧を振り下ろそうとする。

 

~考察(神話パート)~

今回もやはり神話パートが挿入されていました。少し話が脇にそれますが、ところでこの神話の語り部は誰なんでしょうか?

作中の特定のキャラが語っているのではなく、いわば作者自信が読者に語りかけている、物語の時間軸と直接関係ないパートという解釈もできます。

しかし、作中の誰かが語っているとするなら、自分はそれは「浜辺で朔夜たちが出会った謎の少年」だと考えています。更に、自分は彼こそが神話に出てきた成長を拒否した少年であり、彼が笙子にテレパシーで聞かせている内容がこの神話なのではないか、と予測しています。なぜそう思うかについては、ちょっとここで書くと長くなる気がするので別記事に譲ります。

話をもとに戻します。今回与えられた神話は次のようなものです。

 

ほんの2日ほどで

聞こえない女と聞こえる少年の願ったとおりの

誰の言葉も解さず区別を超越した子供が

少女の腹を食い破って産まれた

少年と六人の少女たちは

ヤギの肉や島の果実で子供たちを育てた

子供たちはみるみる大きくなり

すぐに愛し合った2人の願い

「子供が欲しい」を果たす準備を備えた

そこで子供たちは六人の少女やヤギの肉体に卵を産みつけるようになった

 

というわけで、例のガバガバなやり方で人片と魂を使って六つ少女の体に子供の素となるものを埋め込んだ結果、2日で「誰の言葉も解さない」子供が「少女の肉を食い破って」産まれたということです。

一つめの言葉云々に関してまず考えます。

少年と少女の「聞こえる聞こえないの対立に巻き込まれることのない理想の子供をつくりたい」という願いに対する答えが、「誰の言葉もわからない子供」だったということですね。この願いに対する答えとして、例えば「言葉もテレパシーも解する」という答えもあり得たと思うんですよね。しかしながら、この世界の神は「誰の言葉も解さない=誰ともコミュニケーションをとれない子供」という、身も蓋もない答えを出してしまいました。何だかとてもいびつな答えです。誰ともコミュニケーションをとれないというのは、人間と呼べるのでしょうか?

2つ目の食い破った云々について、普通人間の赤子が親の腹を「食い破って」産まれるという表現はしないと思います。加えて、注意深く読んでればわかりますが、先週まででは少女の数は「7人」でした(少年に愛された少女は含みません)。それが、子供が産まれてから、「6人」になっている。さらに、
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上のコマでは新しい子供が描かれていますが、四つん這いではなく四本足で野生動物のように立っています。また、影をよく見ると前二本の腕と後ろ二本の足の間に、二対の「手か足」かのようなものが写っています。また、恐らく「尻尾」と思しきものも影に写っています。ここまでくれば、「ああ、これが例の化け物なんだな」と考えてもかなり自然だと思います。この化物の子供が少女を食い破って殺したから、6人に減ったんだろうなと思います(それか、人片を埋め込んだ時点でもう少女は死んでしまった可能性もありますが)。

ただ、恐らく「敢えて」頭部を描かないで枠外に隠しているのは、それが見えたら一発であの一つ目の化物とわかってしまうからではないか、と予想します。

で、ヤギに卵を産んだということで、化け物が「人間と動物とのキメラ」みたいな可能性が出てきてしまいました。


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上の画像は旧約版からですが、尻尾があります。今までの説明で、人間の部品を組み合わせて使って出来上がったのがこの化け物のはずですから、目、腕や足、舌、歯、女性の胸部をこいつが持ってるのはわかると思います。でも、人間に尻尾はありません。へその尾かな?と思いましたが、それにしては形がこうならないかなと。そこで、別の動物の尻尾を混ぜたのか、と思いまして、今回の話でヤギのエピソードが出てきたので、これかと思いました。でも、子供の尻尾の影は「ヤギに産卵される前」からありますよね?

それとも、この影を尻尾と見るのはちょっと深読みしすぎで、これは尻尾ではなく、次回以降のエピソードで、ヤギから生まれた子どもが尻尾を持ち始めた、なんて説明が入るにのでしょうか?苦しいですが、一応これなら論理の破綻にはならないので、こうあって欲しいという願望はあります。笑

 

こうして化物が誕生した経緯がわかった(恐らく)わけですが、それにしても、少年たちの倫理観がガバガバすぎる気がします。それに、「この少年の当初の目的ってなんだっけ?」と思ってしまいます。

自分の個人的な願いのために、それまで一緒に暮らしていた一人の少女が死んでしまっています(多分)。また、その後六人の少女にも卵を産みつけているのだから、彼女たちも多分死ぬでしょう。そうやって、人間を食い散らかす化物を見て少年は何を考えるのでしょうか。後悔してるのでしょうか、それとも満足しているのでしょうか。

また、愛された少女は「自分が死んだ後も少年が寂しくならないように」子供を欲していたはずです。だから、最初に子供が産まれてきた時点で、その願いは叶ったはずです。にもかかわらず、この子供たちは「すぐに愛し合った2人の願い『子供が欲しい』を果たす準備を備えた」のです。もう目的は果たしたにもかかわらず、目的を果たし続けようとしているのです。

最初に「子供が欲しい」という願いを込めて二人は子供を形作りました。そして、その願いを「そのまま受け継いだ」子供が生まれてしまったわけですね。子供たちは「子供産まなきゃ!」と考えているんでしょうが、「いや、だからお前がその子供じゃい!」と突っ込みを入れてあげないといけないのです。

 

プログラミング説

これをどう解釈するかですが、プログラミングのエラーみたいなものかな、と思います。ある特定の行動をするようプログラミングされたロボットを考えてみると、ロボットはその行動をするという目的を果たさなければ永遠に動作を止めないはずです。ここで、最初に適正にプログラミングしておけば、ゴールにたどり着けるでしょう。でも、最初のプログラミングが間違っていれば、ロボットは永遠にゴールにたどり着けず、無意味に永遠に目的を果たそうと努力するでしょう。

今回の場合、二人は魂に間違ったプログラミングをしてしまい、その間違った魂を持った化物は永遠に目的を果たそうとする、というようなことだと思います。ロボットならその場で適宜プログラミングを修正すればいいだけなのですが、あの化け物相手に、しかも魂などという得体の知れないものに対して修正が効くのかは謎です。

言語を解さない為に自己認識できない説

それか、哲学的な問題で、化物は自分自身を認識できないのかもしれません。

言語というものの役目について、自分の知る限り

  1. コミュニケーションをとる
  2. 思考する

という2つの考えがあります。一つ目はすんなりわかると思いますが、2つ目が何言ってるかと言うと、粗っぽく言えば「言語が無けりゃ人はものを考えることのできない」ということですね。自分自身は2つ目の説は充分あり得ると思います。

だとすると、

 

化物は誰の言葉も解さない

誰ともコミュニケーションをとれない

言葉を話せない

思考できない

自分自身を認識できない

自分自身を子供と認識できない

永遠に子供を産み続ける

 

わかりやすく言うと、こういう式になります。

 

不老不死の少年のための永遠の伴侶が必要説

それか、次のようなことかもしれません。

少年は不老不死なので、永遠に生きなければならない。ということは、子供が一人だけでは、いつか死んでしまうのでまた少年は独りの寂しい状態になる。そのため、子供は何人も、いや少年の生きる限り無限に作らなくてはならない。

こういう理由で化物たちはひたすらせっせと産卵に励んでいるのかもしれません。

 

長くなってきたので神話パートの解釈はこのへんにしたいと思います。

 

考察(物語パート)

ヤギのスープ?

冒頭で朔夜はスープを食べている老婆たちに出くわすわけですが、このスープは何のスープなんでしょうか?神話にしばしば出てくるようにヤギのスープなら随分平和なのですが、もしかして学院生のスープだったり?なんて邪推しています。だとしたらそれはカニバリズムということになり、恐らく人間にとっての最大のタブーを犯しているのではないかと思います。7話の神話でも「本能的禁忌」とされていますし。

 

で、彼女たちは老婆の正体について考えていきます。トリノは、この島には蟻地獄の主がいて、それが放つ超能力のような異次元の力で、化物が産み出され、彼女たちが島から出られないのだと考えます。そして、あの老婆たちはその主なのか?という話になります。恐らく、老婆が主であればそいつを倒せば化物もなんとかできるし、島から出られる、という話になったと思います。

しかし、トリノは老婆は主ではないと考えるようです。というのも、そうした超常的な力を持つ存在であれば、自らを化物の繁殖システムに組み込んで役割を果たすよりも、どこかシステムの範囲外、あるいはそれよりも上位の場所を占め、繁殖システムを支配すると考える方が自然だ、と恐らくトリノは考えたのでしょう。

ただ、これは常識的に推論した結果であって、確実だという保証はありません。

とはいえ、雰囲気的には老婆は超能力は使えなさそうな流れになってはいます。でも、自分が疑問に思っているのは、「神話で出てくる、手から火を出したり、足を折ったり、対象を宙に浮かせて壁に激突させるといった超能力現象は、物語中でもどこかで出てくるのではないか?」ということです。今言及した箇所は、何回か神話パートで出てきますからね。それを考えれば、どこかでそういう超能力が出てくるのではないか…と考えています。

そうなると、老婆たちは超能力を使えそうなので、果たして次回どうなるか楽しみです。

しかし、いずれにせよ、老婆の役割を邪魔しても問題ないと結論づけるのは早急だったのです。

にもかかわらず、皆川は役割を果たす老婆に攻撃しようとします。無理はないです。というのは、彼女の愛した親友の命は、ゴミ同然だと、命の尊厳を奪われたようなものですから。このシーンは、正直きついシーンですね。というのは、彼女の気持ちを推し量るには、読者は「親友を殺された上に、その親友は四肢を切断され、人外の化け物の卵を産み付けられたと思ったら、その卵が孵化できないとわかるや否や、用済みとして捨てられた」という状況を想像しなくてはならないからです。そういったケースは他の学院生にも当てはまりますが、ここまでその心情にフォーカスした場面があったか、と思わせるほどの「表情」がここで描かれていると思います

。それくらいインパクトのある=力の入れているシーンなので、作者に「これほどまでの表情を描かせるに至った経験とは何か?」と聞いてみたいと思いますね。

というくらいインパクトあるシーンです。

 

もう少し短くまとめるつもりでしたが、長くなってしまいました。

やっぱり更新待ちきれないですね……次の更新は8月9日だそうです。気長に待ちましょう!